脚本公開します。いま流行のプロセスエコノミーってやつです。

 

 

 

 

 

 

 

 

キミは代替可能品?

 

 

 

 

 

 

 

阿部 拓歩

 

 

人物

坂下羊子(23)読者モデル

釜田瑠偉(28)芸人

坂上零子(38)マネージャー

山上星羅(19)新人アイドル

上原うさぎ(24)読者モデル

銭山(38)カメラマン

大関(26)アシスタント

女子大生1

女子大生2

メイクアップアーティスト

 

 

 

 

 

 

#1◯雑居ビル 外観

渋谷スクランブル交差点。建設中のビル。

アスファルトの隙間から生える雑草。

花の蕾。踏まれる雑草。高層ビル。

原宿の街並み。雑居ビル。

#2◯撮影スタジオ

メイクアップアーティストが釜田瑠偉(28)の口に口紅を塗る。

ロボットメイクをされた釜田のアップ。

坂上零子(38)が離れた所で下を向いてiPadを触っている。坂下羊子(23)がキョロキョロと周囲を見回しながら慌てて入ってくる。羊子はおっちょこちょいな様子。零子は(遅れてやってきた)羊子を睨みつけ舌打ちする。

真っ白い撮影用のホリゾントでだるそうに撮影準備する銭山(38)が大関(26)に目で合図を送る。

大関「では、オカマダロボコさん入ります。」

釜田「(地声で)よろしくお願いします。」

釜田がカメラを持つ銭山の前に立つ。

唾を飲み込む羊子。(ワクワクした顔)

釜田の真剣な顔が面白い顔に変わる。

釜田「(オカマ声で)そう!そこよ!

うん!すっごく良いわ!」

画面がカメラのファインダー風に切り替わる。リズミカルなシャッター音と共にオカマポーズを決めている釜田。

羊子は釜田の方を食い入るように見る。

零子は興味を示さず下を向いてiPadを黙々と触っている。

羊子「釜田さん、凄いですね。一瞬でスイッチ切り替わった。」

羊子の持つスマホのカメラ越しにオカマポーズを決めている釜田。

零子「あなた、それ、どうするつもりよ?」

羊子「え、SNSにあげようかと…」

零子は羊子のスマホを取り上げ睨みつける。

零子「あんたバカ?1枚の写真に何人が関わってると思ってるのよ」

羊子の声「す、すみません」

釜田の顔のアップ。突然、笑顔から無表情に切り替わる。

釜田「ロボットニモ、エラブケンリ、アリマスカラ」

ロボットみたいにカクカク動きながら無表情で喋る釜田。

周囲から聞こえる爆笑の声。

釜田を見つめている羊子も思わず笑う。

零子は笑う羊子を見て呆れ顔で溜息を漏らす。

 

#3◯路上(原宿)

人通りが多い道。周囲にはオシャレなブティックが立ち並んでいる。

カメラをぶら下げた銭山と羊子が並んで歩いてくる。大関が荷物を抱えて後から走ってくる。

手元の書類を見る銭山。プロフィール欄には『坂下羊子』と書かれている。

銭山「ええと、…サカシタコヒツジさん?」

羊子「(笑顔で)ヨウコです!羊の子と書いてヨウコと読みます。よろしくお願いしまぁす!あっ自分、ちなみにひつじ年生まれで生まれは四国ッス。」

失笑する銭山。

羊子は自分で携帯用の鏡を見ながらメイクを直し、カバンに入れる。

カメラのフレームの中で張り切ってポーズを決める羊子。

羊子「カメラマンさんは普段、どんな作品を撮られているんですか?」

銭山の声「(面倒くさそうに)は?別に。作品ってほどのものは…」

羊子の方を見ようともせず手元のカメラを見て操作する銭山。

銭山の声「あ〜喋らなくていいよ。そう、笑顔で〜」

銭山の様子を伺いながら笑顔でポーズを決める羊子。

響くシャッターの音。

銭山の声「(面倒くさそうに)はい。お疲れさまでした〜」

羊子「え?今ので?いや、もうちょっと、あるんじゃないかと…」

大関「ありません。オッケーです。」

羊子「ほら、このポーズとか、ABI TOKYOの服の質感が…」

大関の声「す・い・ま・せーん!!聞こえませんでした?OKなんで。」

睨みつける大関と不満げな羊子。

大関は笑顔に切り替わって他方を見る。

大席「次は上原うさぎさんですね。どうぞ〜」

上原うさぎ(24)が入ってくる。

うさぎ「ちょっと、邪魔なんですけど?」

渋々カメラフレームから出ていく羊子。

うさぎ「うざ」

カメラに気づくと突然、猫を被ってうさぎのモノマネをするうさぎ。

#◯家・リビング

学生服を来た羊子が部屋の中でポツンと座っている。

#◯河川敷

学生服を着た羊子が〇〇に背中を向けて立っている。

羊子「私、東京に行こうと思ってるの」

〇〇

羊子「退屈な街だから」

 

#4◯河川敷(多摩川)

ミュージカルがスタート。

空、河川敷の道、石ころ、緑、花、道。(淡く穏やかで明るい色彩)

羊子が一人で踊りながら歌っている。周囲に人はいない。

 

タイトルコール

「キミは代替可能品?」

 

空、道、石ころ。

羊子「fungible…no more fungible.私の道は続いてゆくの、でもこの糞道、進めないわ」

遠くで見えるタワーマンション群。

羊子「…」

遠くを見つめる羊子。

羊子「東京のバカー」

遠くに見えるタワーマンション群。

 

#5◯羊子の部屋 夜

ベットで寝転んで電話をしている羊子。

羊子「ママ?私ね、雑誌に載ったんだよ!え?ああ。ファンジブルって雑誌よ」

机の上に置かれた雑誌。ストリートスナップのページの隅っこに小さく羊子が写っている。

電話が切れる音。不審そうにスマホをみているとラインが来る。画面には「ママ:今、家族揃って食事中なので、また明日にしますね。」

羊子「家族揃って…か」

画面には「ママ:お義母さんは羊子を応援しています」と表示。

羊子の複雑な表情。

×  ×  ×

ソファーに座って歯ブラシをくわえている羊子。服がパジャマ姿に変わっていて部屋の電気はついている。

羊子「でね、せっかくポーズ考えていったのに撮ってもくれなかったわけ!絶対あっちの方がABI TOKYOっぽいのに…だって、ABI TOKYOってナチュラル可愛いが売りのアパレルブランドなのよ?…ねえちょっと聞いてるの?もしもし?もしもし?」

 

×  ×  ×

ベットの上でスマホをいじっている羊子。部屋の電気は消えている。

画面にはtwitterらしきサイトが表示されている。

スマホ画面を見る羊子。

羊子の脳内では書き込まれた声が再生される。

女子大生1の声「このモデルさあ、なんか痛いよね」

女子大生2の声「わかる〜、この頑張ってる感じ!」

女子大生1の声「読者モデルのくせにね(笑)」

羊子「読モは通過点だもん!」

スマホをベットに投げつけ枕に顔を埋める羊子。

羊子「うるさい、うるさい、うるさーい!」

暗転。

 

#6◯(フラッシュ)真っ黒い空間

不気味な音楽と共に遠くから声が聞こえる。

大関の声「兄貴、今日のあのモデル、面倒くさかったッスね。なんか、ファッションやりたいみたいっすよ。あれじゃ無理だけど」

銭山の声「ザ・初心者だよな。どうせ、すぐ消えちまうさ」

大関の声「夢なんて言葉、俺、久しぶりに聞きましたよ」

銭山の声「お前、少女の夢を潰してやるなよ」

大関の声「自分、ああいうやつ見ると虫酸が走るんすよね」

羊子「うるさい、うるさい」

 

#7◯公園(代々木公園)

羊子「うるさーい!一生懸命やって

何が悪いのよ!」

銭山の怪訝そうな顔。

はっと我に返った羊子。

羊子「あ…何でも無いんです。すみません…」

 

#8◯事務所 中

電話の音が鳴り響く。

事務所の中で零子が電話を取っている。

零子「ウチの坂下が大変、失礼いたしました。しっかり教育しておきます。はい。申し訳ありません。完全にウチの落ち度です。」

様子を伺っている羊子。

零子は電話を切ると羊子の方を向き溜息をつく。

零子「あんた、何様のつもりよ!」

羊子「いや違うんです。そんなつもりじゃ」

零子「なんであんたが、カメラマンに指図するのよ。なんで、あんたがポーズを決めるのよ。ふざけないで。」

零子はヒートアップして羊子に迫る。

羊子「いや、き、決めていません。て、提案しただけです。ホントに!」

零子は机をバンと叩く。

零子「うるさいって何なのよ!」

羊子「あ…それは、その…」

零子は羊子にさらに迫る。

零子「いい?モデルってのはね、ビジュアルで表現するのが仕事なの。気持ちを押し付けてどうすんのよ」

羊子「はい…」

零子「言葉じゃなくビジュアルで表現してみなさいよ。ビジュアルで黙らせてみなさいよ。そんなだから読者モデルなのよ。」

羊子は歯を食いしばり睨み返す。

#9◯道

ビルの前で羊子が立っている。

カバンを持った零子がビルの中から現れ、どこかへ向かおうとする。

羊子は零子に気づき駆け寄っていく。

羊子「零子さん、あの…この前は

すいませんでした。」

零子「え?あ、ああ。別に良いのよ」

羊子「いや、ギャラを頂いている

という自覚が足りませんでした」

零子「私に宣言したって何にもならないわ」

零子は立ち去ろうとするが、羊子が後から追いかけ、話しかける。

羊子「どうしたら、いいでしょうか?

私、頑張りたいんです」

零子「さあね。でも、まずは自分が何者でも無いって事を認めることが第一歩かしら。」

羊子は立ち止まる。

羊子「…何者でも…ない?」

構わず去ろうとする零子。

羊子は再び追いかける。

羊子「それってどういうことですか?」

零子は立ち止まり笑顔で振り返る。

零子「あなたの代わりが

幾らでもいるってことよ」

羊子の目はうるうるしている。

 

#10◯車の中

後部座席に座って羊子が外を見ている。

釜田「どうしたの?元気ないじゃない?」

羊子「ちょっと、やらかしちゃって。

もうダメかも」

隣りに座った釜田が羊子を見る。

釜田「私、知ってるわ。あなたは頑張ってる

わよ。主張の仕方を知らないだけ」

羊子「…釜田さんみたいに優しい人ばっかり

だったら良かったんですけど…」

釜田「零子、言ってたわ。あの子の言う

ことも一理あるって」

羊子「…そうなんですか。」

釜田、羊子の両手を握る。

釜田「芸能界は見世物の世界。

強くなきゃ生き残れないのよ。」

羊子「強くなりたいです…」

釜田「私はね自分のことをコマの一つ

だって思うようにしているの。」

羊子は大きく目を見開き

唖然としている。

釜田は優しく微笑む。

釜田「…だってロボだもの」

羊子は寂しそうに笑う。

釜田「売れなくなったら、ロボット芸

なんて捨てちゃえばいいのよ。」

羊子「せっかくブレイクした芸なのに?」

釜田「私達は商品よ。売れなくなった商品は陳列棚に並べておくべきじゃないわ。その時は私、マネージャーでも何でもやるわよ。」

羊子「私、そんな風に割り切れる

自信ないかも…」

釜田「私も自信なんて無いわ。

だってこの世界は戦場だもの」

羊子「戦場…ですか?」

釜田「そう。私達は喩えるなら爆弾を背負って飛行機に乗った特攻隊員よ。」

羊子は神妙な顔で釜田を見る。

釜田「ここではね、死ぬのが普通なのよ。特攻隊員みたいに皆死んでく中で私はたまたま運良く生き残っただけ。」

羊子は黙って聞いている。

釜田「芸能生命って奇跡の賜物。でも…来年にはどうなってるか分からない」

羊子「私、釜田さんは本物だと思います」

釜田「ありがとう。でもね、

それぐらい儚いのが私達の命よ」

釜田「だから、辛いときはこう叫ぶの。

資本主義のバカヤローって。」

羊子は少し笑って目を見開く。

羊子「え?なにそれ?意味分かんない。」

釜田「いい?資本主義ってのはね。資本家が牛耳る世界のことよ。だけど、おかしいと思わない?お金持ちがこの東京を動かしてるだなんて。だいたい、民主主義ってのも市民が主人の主義なのよ。成立は17世紀の市民革命…」

羊子は嬉しそうに笑顔で釜田の言葉を遮って喋る。

羊子「あ、東京!!」

釜田はキョトンとしている。

羊子「つまり、東京のバカってことですね。」

釜田「あんた、田舎者丸出し(笑)それとね、ついでに、もう一つ教えておくわ。芸能界では死んでも命は取られないのよ。普通の人間に戻るだけ。」

羊子「そっか〜。そうですよね!!」

羊子は車のウインドウを開け外に向かって叫ぶ。

釜田は不思議そうに羊子を見る。

羊子「東京のバカー」

二人は目を合わせながら笑う。

釜田「私はあなたの味方よ。」

 

#11◯撮影スタジオ

赤い背景紙がセットされたスタジオ。

カメラの向こうでポーズを決める釜田。オカマの格好をしている。

真剣な表情で釜田を見つめながらメモを取る羊子。

釜田「オカマロボニモ、シアワセ、クダサイ!ワタシもオトコ、カゾク、ホシイ」

何度もうなずく羊子。

手元のメモには『なりきることが大事』と書かれている。

 

#12◯路上

銭山の前で得意気にポーズを決める羊子。

うなずく銭山。

 

#13◯事務所

電話に出る羊子。

羊子「はい!ありがとうございます。何卒よろしくお願い申し上げます!」

 

#14◯撮影スタジオ

青い背景紙がセットされたスタジオ。

カメラの向こうでポーズを決める釜田と羊子。

銭山「はい!オッケー!オカマロボ最高!」

ハイタッチをする釜田と羊子。

×  ×  ×

銭山の持つパソコンモニタに映る釜田と羊子。羊子が写真を指差し銭山に話しかける。

羊子「こっちのポージングいかがでした?」

銭山「まあまあだな」

 

#15◯写真

いろんな羊子の写真が出てくる。

色んな方向から様々な声が、被って聞こえてくる。

零子の声「まだまだダメね」

大関の声「もっと大きく動けないの?」

銭山の声「うまくなったじゃん」

#16◯河川敷

女子大生1と2がスマホをみながら

喋っている。

女子大生1「あの子羊さ最近カワイイよね」

女子大生2「フォロワー増えてるもんね。」

ピッという効果音の後に画面右下にfollwerと表示。500から始まったカウンター数がどんどん増えていく。

#17◯スタジオ

釜田が羊子に駆け寄る。

釜田「羊子ちゃん10万人だよ!10万人!」

映像が早送りになっていきBGMの音量もどんどん上がっていく。

#18◯写真

画面に増えていく写真。色んな方向から様々な声が、被って聞こえてくる。

星羅の声「あの、羊子さん、写真撮って

貰っていいですか?」

零子の声「調子に乗るんじゃないよ」

釜田の声「オカマダロボ子はコヒツジと

トモダチデス」

零子の声「凄い!」

暗転。

 

テロップ「2年後」

 

#19◯羊子の部屋 夜

零子がウーバーイーツから届いた料理を袋から出してテーブルに並べている。

羊子は部屋の整理整頓をしている。

山上星羅(19)がホームパーティーグッズの飾り付けをしている。

星羅「ヨウコ先輩!これ、ここに飾り付けちゃう感じでいいですか?」

羊子「え?そんなものまで買ってきたの?大げさだなぁ」

遅れて釜田がやってくる。オカマメイクはしておらずスーツを着ている。

釜田「遅くなりました〜」

零子「あ、釜田くん、お疲れ様〜」

釜田「俺は何を手伝えばいいですか?」

零子「星羅の飾り付け手伝ってやって」

釜田「了解です。」

釜田はスーツのジャケットをポイと脱ぎ捨て、ネクタイを外し、白いシャツの第一ボタンを外し、腕まくりをする。

羊子「ちょっと、私が買ってあげたスーツ、大事に着てくださいよ?

この〇〇ってブランド高いんだからね」

釜田「ああ、ごめん。俺、実はガサツで…」

零子「よく、あんな繊細な芸やってたわよね」

星羅「おい、釜田。早くしろよ」

羊子は星羅の方を怪訝そうに見る。

釜田は星羅と一緒に飾り付けをする。

釜田「あ、すみません、こんな感じでどうですか?」

星羅「うん。いいよ。零子さん、どうですか?」

零子「おーバッチリじゃん!どう、ヨウコ?」

羊子「うん、零子さん、バッチリ!」

零子「よし!じゃあ、みんな揃ったし、そろそろ始めますか」

零子、グラスに飲み物を注いでいく。

羊子「あー、皆様、今日は私のために…」

星羅「ヨウコ先輩、表紙おめでと〜〜」

一同「カンパーイ」

釜田は雑誌をパラパラとめくる。雑誌の表紙には羊子が写っている。

釜田「ほんと、羊子ちゃん、凄いよね〜表紙だよ、表紙!」

星羅「ねえねえ、釜田、ヨウコ先輩とツーショット撮ってよ」

星羅は釜田にスマホを渡す。

羊子「…釜田?」

×  ×  ×

テーブルの上の食べ物は無くなっている。

零子「でもさ、この2年、本当にヨウコは成長したわよね。もうコヒツジだなんて呼べないもの。」

羊子「また〜〜!零子さん、馬鹿にしてるでしょ!」

星羅「おい!釜田、おかわり!あ〜あ。釜田がもっと仕事取ってきてくれたら、私ももっと露出できるのになぁ…」

羊子は手で机を強く叩く。周囲はびっくりして羊子を見る。

羊子「あんた、何様?」

星羅「え?だって釜田が…」

羊子「タレントがそんなに偉いの?勘違いしないで。あなたがステージに上がるために釜田さんがどんなサポートをしてくれているのか」

釜田「ヨウコちゃん、俺は別にいいから!」

零子「いや、ヨウコの言うとおりよ」

星羅「…ごめんなさい」

 

#17◯車の中

釜田が車を運転している。

星羅と羊子が後部座席に座っている。

星羅は歌を口ずさんでいる。

星羅「私の道は続いていくの〜〜♪」

羊子「あなた、その曲好きなのね」

星羅「え?あ、ああ…。」

羊子「口ずさむのは、クソ沼のところばっかりだけどね」

星羅「だってそうじゃないですか。」

羊子「え?何が?」

星羅「…いつまで、くすぶってるんだろう。なんか、私じゃなくてもいい仕事ばっかり。ホント、沼だわ」

羊子「そんな事無いって!」

星羅「自分では前に進んでるつもりなんです。でも、もがいても、もがいても変わらない。実はなんにも前に進んでなくて沈んでるんじゃないかって。」

羊子「あなたの気持ちはよく分かる。…私もそんな時があったから。ね、釜田さん?」

釜田「ちょっと気晴らしに散歩でもしてきたら?次の現場まで時間あるし。」

釜田の運転する車が停まり、ドアが開く。

 

ミュージカル、スタート。

#18◯河川敷

 

河川敷を散歩する星羅と羊子。

空、川、ビル。

花、道、ビル。

歌う羊子。

羊子「私の道は続いていくの♪」

歌う星羅。

星羅「でも、このクソ沼、進めないわ♪」

羊子「新しい魔法よ、さあ♪」

女子大生1「あのう、写真撮って貰えませんか?星羅さんと羊子さんですよね?」

女子大生1と星羅と羊子は3人で写真を撮る。

手を振る星羅と羊子。

お辞儀する女子大生。

女子大生1「わたし、星羅さん応援してますから!」

笑顔の羊子。

星羅が水面の方に向かって歩いていく。

星羅が石ころを拾って水面に投げる。

石が水面で一回、二回と跳ね返る。

星羅が遠くで叫んでいる。

星羅「東京のバカー!」

車の運転席から釜田は星羅を見ている。

羊子が釜田を手招きする。

釜田は手でNOとサインをする。

河川敷を歩く羊子と釜田。羊子は強引に釜田の手を引いて歩く。

ミュージカル、終了。

羊子「私、釜田さんが居てくれて良かったなぁ」

釜田「俺の代わりなんて、いくらでもいるだろ。今はただのマネージャーだぞ」

羊子「ううん。釜田さんじゃないとダメ。」

釜田「それってもしや愛の告白ってやつ?」

羊子「釜田さんってホント面白いわね。」

釜田「なんだ、違うのかよ」

羊子「私は釜田さんが取ってきてくれた仕事だから頑張ろうって思えるの。あなたの代わりは何処にもいないわ」

釜田の顔のアップ。

釜田「そういえば、面白い話がきてたよ。NFTがどうのこうのって。」

羊子「…キレイな顔」

釜田の横顔。

釜田「なんか、よくわからないけど、ノン・ファンジブルなんだって」

羊子の方を見つめる釜田。

慌てて目を逸らす羊子。

釜田「あっファンジブルってのは替えが利かないっていう意味らしい。」

羊子「釜田さんみたいね。」

心臓がドキドキする音。

 

おわり

 

 

 

 

 

お読み頂きありがとうございます!

第1話はこれにて終了ですが、評判が良かった時のために続編のあらすじを考えております。

↓  ↓  ↓

 

第2話 テーマ性被害

 

芸能界を舞台にした性被害の話。食い物にされる寸前の羊子を救う釜田。この一件があってから羊子は釜田に想いを寄せるようになる。

 

参考(ネットに転がっていた書き込み)

今に始まった事ではなく、ずーっと起こっていた事です。私も業界のはしくれの人間でしたが、スタッフ皆んなで飲み会やるからおいでと言われて自宅に行ったら、誰もおらずテーブルの上には私と撮った写真が飾られていて恐怖どころかもうどうして良いか分からなくなり、必死に脱出しましたがその後はもちろん仕事は完全に干されました。今のようにSNSがある時代でもありませんでしたし、上司に相談する事も出来ませんでした。本当に辛かったです。結局仕事はそれを機にやめましたが、今でもトラウマになっています。もう少し強い自分がいたら文句の一つもぶつけられたのになと思います。若かったです。黙っておくしか出来ませんでした。本当は才能に溢れた人がもっといます。邪魔をしている事は事実ですね。

 

3話プロット

釜田と羊子の恋の物語。羊子を全力で育てる釜田とマネージャーである釜田に想いを寄せる羊子。釜田は絶対にダメだと自らに言い聞かせるが気持ちを抑えられなくなっていく。

羊子にとって仕事を頑張る理由は「釜田」であり、モデルとして生き残ることに興味はない。一方、釜田にとって羊子は自分が叶えられなかった夢を背負う存在。どんなに羊子に魅力を感じても、自らの手で二人の関係性を壊してしまうことはあってはならないことだった。

 

4話プロット

すべてを失った二人の行く末。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

阿部 拓歩

 

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